「スウェディッシュマッサージって名前は聞いたことがあるけど、どんなマッサージか知らない」という方も多いのではないでしょうか?
実際にマッサージセラピストとして働いている方でも、スウェディッシュマッサージの歴史や特徴、他のオイルマッサージとの違いがわからないという方もいるかと思います。
そもそも、スウェーデンってマッサージ有名なの??
ちょっと気になりますよね……わかりやすく解説していきます。
スウェディッシュマッサージとは?
スウェディッシュマッサージを一言で表わすと「オイルマッサージの原点であり基礎中の基礎」です。オイルを使用した*求心的なマッサージの基本となるのが、このスウェディッシュマッサージになります。「Swedish=スウェーデンの」という意味なので、スウェーデン式マッサージということですね。
日本をはじめ世界各国では「スウェディッシュマッサージ」や「スウェーデン式マッサージ」などと呼ばれることが多いですが、「クラシックマッサージ(classic massage)」としても知られています。クラシック=古典的・伝統的なマッサージという意味ですね。
アロマオイルマッサージ、ハワイのロミロミマッサージ、インドネシアのバリニーズマッサージ、アメリカのディープティシューマッサージなど……大半のオイルマッサージの手技のベースは、スウェディッシュマッサージが元となっていると考えて良いでしょう。
*求心的なマッサージ
求心法と呼ばれ、リンパや静脈の流れを促進させるように、指先などの体の末梢部から心臓に向かって行うマッサージ法。反対に、動脈の流れや筋膜・筋肉へのアプローチに焦点を当てたものが、東洋系マッサージに多い遠心法となります。
スウェディッシュマッサージの特徴
少量のオイルを使用し、軽めのタッチでリズミカルにやや速いテンポで施術するのが、スウェディッシュマッサージの大きな特徴です。基本的には、リンパや静脈の流れの促進を目的とした求心法でのマッサージになります。
スウェディッシュマッサージには100種類以上の手技が存在しますが、代表的なテクニックは以下の5つとなります。
スウェディッシュマッサージの基本手技
- エフルラージュ / Effleurage(軽擦法)
- ペトリサージュ / Petrissage(揉捏法)
- フリクション / Friction(強擦法)
- バイブレーション / Vibration(振動法)
- タポートメント / Tapotement(叩打法)
手技の詳細や、スウェディッシュマッサージのやり方については、こちらの記事で紹介しています。
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上記の代表的なテクニック5つやその他の手技が、他のオイルマッサージでも広く活用されています。例えば、スウェディッシュをベースにアロマテラピーを組み合わせたものがアロマオイルマッサージになり、より深部の筋膜や筋肉にフォーカスしたものがディープティシューマッサージになるといった具合です。ロミロミやバリニーズも、マッサージ哲学や施術の強弱・テンポは違えど、手技の基本テクニックはスウェディッシュから派生したものと考えて良いでしょう。
スウェディッシュマッサージの効果については、こちらで解説しています。
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スウェディッシュマッサージと他のオイルマッサージとの違い
大半のオイルマッサージの手技ベースがスウェディッシュであることから、他のオイルマッサージとの大きな手技の違いはありません。
強いて言うなら、スウェディッシュマッサージの元々の始まりが医療的マッサージなので、リラクゼーションというよりは治療に重きを置いたオイルマッサージではあります。ドイツやフランスのリンパドレナージュもそうですが、ヨーロッパのマッサージは慰安よりも医療的な側面が強い傾向にあります(治療=圧が強いということではありません)。日本でも同じことが言えますが、アジア各国の方が慰安目的のリラクゼーションマッサージも盛んだということですね。
スウェディッシュにリラクゼーションやスピリチュアルな要素を加えていったのが、アロマオイルマッサージであったり、ロミロミ、バリニーズということになるでしょう。もちろん、スウェディッシュだけではなく、フランスや中国のマッサージ技術も組み合わせて、世界各国独自のマッサージとして発展していったのでしょう。
ピザで考えるとわかりやすいでしょうか。ピザの基本となるトマトベースのマリナーラ(スウェディッシュ)があり、チーズとバジルをのせてマルゲリータ(アロマ)、生地を厚くしてシカゴピザ(ディープティシュー)、ハムとパイナップルでハワイアンピザ(ロミロミ)、卵を落としてビスマルク(バリニーズ)のように…
スウェディッシュマッサージの歴史
「オイルマッサージの原点がスウェディッシュマッサージということは、マッサージの発祥はスウェーデンなの?」と思ってしまいそうですが、そうではありません。
マッサージの起源は諸説あり、はっきりとはわかっていませんが、少なくとも紀元前の時代から、エジプト文明やメソポタミア文明で何かしらのマッサージが行われていた痕跡が見つかっています。古代中国・ギリシャ・ローマ・インドでも、同じようにマッサージに関する文献などが発見されていることから、確実に4000年以上は昔から、様々な地域や文明でマッサージが行われていたということになります。
古代から中世にかけても、マッサージを取り入れた医学的な療法が、様々な国や地域で独自に発展していきました。
近代的な西洋の医療マッサージシステムは、黄帝内経と呼ばれる中国医学の古典を、中国のフランス人宣教師がフランス語に翻訳したものがフランスからヨーロッパに広がったと考えられています。
スウェディッシュマッサージ(クラシックマッサージ)の発明者として、長年「マッサージの父」として知られていた、スウェーデンの理学療法士ペール・ヘンリック・リンは、実際には「医療体操」の開発と体系化に努めた人物でした。その中に、中国の推拿(スイナ)を参考にしたいくつかのマッサージテクニックは含まれていましたが、しっかりと体系化されてはいませんでした。
現在では、スウェディッシュマッサージの真の創設者は、オランダの医師でありマッサージ師のヨハン・ゲオルグ・メツガーとされています。彼が、ペール・ヘンリック・リンの医療体操の中の医学的マッサージに影響を受け、さらにフランスのマッサージ技術と用語を使用して、1878年?に「スウェディッシュマッサージシステム」として発表しています。この中に、先ほど紹介した5つのマッサージテクニック(エフルラージュ ・ペトリサージュ・フリクション・バイブレーション・タポートメント)が挙げられています。これが現代のスウェディッシュマッサージの原型となっています。
彼の患者には、オランダ王ヴィルヘルム3世の長男、スウェーデン王のグスタフ5世、教皇レオ13世、オーストリア皇后エリーザベト、スウェーデン王女ルイーズと、名立たる世界中の有名人がいます。後に、スウェーデンのルイーズ王女の支援を得てオランダにヘルスリゾートを建設していることからも、スウェーデン皇室との深い関わりがあったと推測できます。
上記の歴史の流れから、スウェディッシュマッサージが現代の西洋式オイルマッサージテクニックの源流であると言えるでしょう。しかし、スウェーデンで実際に発祥した訳ではなく、スウェーデンに行けば本格的なスウェディッシュマッサージが受けられるということではありません。奇妙な歴史をたどって「スウェディッシュマッサージ」という名がついたことを理解しておきましょう。
ちなみにスウェーデンでは、1960年代に「タクティール・マッサージ」という、限りなく優しいタッチで触れることで愛情ホルモンとして知られるオキシトシンの分泌を促して不安の解消を図る緩和ケアも誕生している。医療機関、高齢者福祉施設、保育所などでも導入されており、福祉国家であるスウェーデンが医療の分野でのマッサージの研究に力を入れていることがわかる。
まとめ
スウェディッシュマッサージの特徴と歴史についてのまとめです。
スウェディッシュマッサージとは
- 近代オイルマッサージの原点であり基礎中の基礎
- クラシックマッサージとも呼ばれる
- 大半のオイルマッサージの手技のベースがスウェディッシュ
- 軽めのタッチでリズミカルにやや速いテンポで行う
- リンパや静脈の流れの促進を目的とした求心的なマッサージ
- 5つの基本手技と100種類以上のテクニックがある
- 中医学書を翻訳したフランスのマッサージ技術が大元
- スウェーデンの理学療法士ペール・ヘンリック・リンによって医療体操の一部に推拿を参考にしたマッサージが組み込まれる
- 医療体操やフランスのマッサージ用語を元にオランダの医師ヨハン・ゲオルグ・メツガーがフレーズ&体系化
- 奇妙な歴史をたどってスウェディッシュマッサージと名がつく
- ただし、スウェーデンでもの凄く盛んというわけではない
- スウェーデンでは優しいタッチでケアするタクティールマッサージも医療分野で活用されている
巡り巡って「スウェディッシュマッサージ」という名が浸透していったわけですが、近代オイルマッサージの基礎であり、様々なオイルマッサージの手技のベースがスウェディッシュであることに違いはありません。オイルマッサージの原点を体感してみたい方はもちろん、これからマッサージを学びたいという方も、一度このクラシックマッサージを受けてみてはいかかがでしょうか?
スウェディッシュマッサージの効果・やり方・スクール情報については、こちらの記事にすべてまとめてありますので、ぜひご覧ください。
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